≪舞台エピソード≫
久しぶりの劇団公演への出演です。
そして、珍しいことに同期の男が３人そろっての出演となりました。
板倉君は、俳優の企画によるサード・ステージを除く、昴の公演への出演は今回が初めてですが
出番の多いドリーの弟役に抜擢されました。
中西君は、’０３年の昴公演『ナイチンゲールではなく』で文化庁芸術祭賞新人賞を受賞。
今回は慣れないゲイの役に挑戦。
そして僕は・・・、無口な役。
よく喋る役ばかりやってきた僕にとっては、これは難しかった。
あまり喋らないということは、つまり台本から拾えるデータが少ないということですからねー。
（ホントは男の同期はもう１人いるんですが・・・。昴のロングラン作品『クリスマス・キャロル』で活躍中の奥田隆仁君です。）

３人にとって、どの役も大きな挑戦でした。
キャスティングしてくれた演出の三輪えり花さんにとっても、きっと大きなチャレンジだったにちがいありません。
期待に応えなければ！

稽古も中盤にさしかかった頃、ドリー役の要田さんの知人で
長年アイルランドを研究されているという女性がいるということで稽古場で講義をしてもらうことになりました。
アイルランドの気候風土や人々の習慣についてひととおり説明してくださったあと、彼女に出演者から
「この台本を読まれて、どう思いましたか？」という質問が出ました。
その答えとして話して下さったこと、とても印象的でした。

「アイルランドでは、この台本に書かれているような事はありませんよ。」というところから話は始りました！
彼女によれば、まず「ドリー」という名前は、どう調べてもアイルランドには存在しない。
おそらくクローン羊の「ドリー」から取ったものだろう、ということでした。
そして戦時中のアイルランド女性が、キッチンでイタリア料理を作っているなどというのもありえない。
ましてや当時のアイルランド人男性がゲイであることを告白したり、まわりがそれを認めたりというのもありえない。
とのことでした。
つまりすべておとぎ話。「こんなことがあったら面白いかも」という話だというのです！
これは衝撃的！
昴では翻訳劇をやることが多いので、台本の中に日本では考えられない出来事が書かれてあっても
僕なんかは「へぇ、アメリカ（イギリス）ではそうなんだぁ」
と、わりと簡単に受け入れてしまうところがあるかもしれません。
それが全く架空の話でも気づかないのかも。
アメリカ人で、今でも日本にはサムライがいてハラキリやってると思ってる人がいるとしたら
僕らのアイルランドに対する理解ってそれとあんまり変わらないのかもしれませんね。

でも今回の芝居は内容が面白いから大丈夫。僕が彼女の話を聞いてイメージしたのは
たとえば江戸時代に中華料理作ってる町娘がいて、そこにゲイと無口なアメリカ兵がやってくる…
なんてシチュエーションですが、そんなのも面白いでしょ？
全く折り合いのつきそうもない人たちが集まって、でも次第に互いを受け入れ、愛するようになる。
もちろんフィクションだけど、そんな素敵な物語です。

素敵な物語と、挑戦しがいのある役をいただいて、演出の三輪さんと観客の皆さんの
期待に応えられたかどうか？ご覧いただいた皆様、いかがでしたか？

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（２００４年５月　　　岩田翼）

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公演直前特別インタビューはこちらから
こたろーさんによるドリー・ウェストのキッチンレポートはこちらから