タイトル <リーディング>
女流詩人のために夫が必要です
日本演出者協会
国際演劇交流セミナー
作・演出 作:エレーナ・ポポワ 訳:古澤晃 演出:小林七緒
上演場所
日程
2005年 8月 6日 /  芸能花伝舎(東京)
出演者 伊藤弘子(女友達) 岩田翼(ゲーナ) 籠嶋徹也(帽子をかぶった男)
川路祥代(詩人) 瑞木健太郎(男の中の男)
あらすじ
町なかのとあるアパートに女流詩人がひとり暮らしている。
ある日詩人の家に、追われているらしい男が逃げ込んでくる。男の名はゲーナ。
勤務する大学で同僚が自分より先に助教授になったことをねたみ、パーティーの席で大暴れ。
警察に追われているという。詩人はゲーナを可哀想に思いかくまう。
ゲーナは詩人の優しさに感動して居候を決め込むが詩人の女友達はこれに大反対。
ゲーナみたいな情けない男ではなく詩人にはもっとふさわしい男が必要だという。
そこへ現れたのが詩人の隣の部屋に住む男。
女友達は、ピザ屋を経営しているというこの男こそ男の中の男だと言い、詩人との仲をとりもとうとする。
ゲーナは自分の居場所が無くなることを恐れて必死に抵抗するが、女友達と隣の男は
「二つの部屋をへだてる壁が無くなれば詩人ともっと親しくなれる」と、とうとう壁を爆破してしまった・・・。
ベラルーシの鬼才がはなつ痛快ドタバタ爆笑喜劇。

                    ≪舞台エピソード≫
はじめてリーディングに挑戦しました。
感想は…、すごく楽しかった!

リーディングというのは、もうご存知かもしれませんが、俳優が台本を持ったままあまり動かずにセリフのやりとりだけで見せる劇です。
普通の芝居の稽古でも最初の何日かはみんなで机を囲んで本読み稽古をしますから、動かずにセリフを言うのはそれと同じなんですが、リーディングで特徴的なのはト書きです。「詩人が登場」とか「ゲーナはピザを食べている」などなど・・・。お芝居では動きで表現されるので、台本には書いてあってもその言葉自体がお客さまの目や耳に触れることってあまり無いですよね。でもリーディングの場合、セリフだけでは登場人物がいつ入ってきたのか、何をしてるのかがわからないのでト書きも読みます。

このト書きがとっても重要!
はじめは他の多くのリーディングのようにそのシーンの出演者ではない人がト書きを読んでいたのですが、あまりうまくいきません。
とくに今回の作品はドタバタのコメディなので乱闘あり爆破あり!シーンが盛り上がった時、セリフとセリフの間にナレーションのようにト書きが入ると急に間抜けな感じになってしまう。これが逆にオチになって面白くなることもあるんですが、ちょっとでも間をはずすと大失敗。もっともっと稽古の日数があればセリフとト書きの呼吸を合わせることもできるかもしれないけど、稽古は5日間だけだし・・・。

そこで演出家が提案したのは、自分のト書きは自分で読むというものでした。
そうすれば「ゲーナがドアから入ってくる」というト書きを元気に言い、一方で「こんにちは」というセリフをすごく遠慮がちに言ってゲーナの気の弱さを際立たせることも出来るし、「さようなら」というセリフを強く言ったあとに「ゲーナ去る」というト書きを静かに言えば、去りぎわのゲーナのセリフの裏にある悲しみまでも表現することができるようでした。
セリフだけでなく動きも自分のニュアンスで語れるようになり、そのコントラストも自由自在。
ひとりひとりがとてもイキイキとしてくるようでした。

おかげで公演は大成功!
全く役者が動かないドタバタコメディでしたが、会場の皆さんはたーくさん笑ってくださいました!
よかった♪


ところで、共演した瑞木健太郎と演出の小林七緒は、ともに僕が演劇研究所で芝居の勉強をしていたときの同期生です。
卒業してからかれこれ7年。それ以後、初めて一緒に作品作りに関わりました。
久しぶりの再会はとても良いものでした。

七緒はすっかり演出家として貫禄がありました。もともと知恵も知識もすごく多くて賢いヤツだったけど、さらに磨きがかかってました。
ダメ出しは的確だし行き詰ってもすぐに次のアイデアが出てくる。もう頼りになるったら!
それでいて人の考えにもしっかり耳をかたむけてくれる。感心しきりでした♪

健太郎とはむかーしのちょっと苦い思い出がありました。
僕の一方的な思い込みですけどね。
研究所の卒業公演、健太郎と僕は同じ役にダブルキャストで配役されました。
健太郎はその演技がとても良くって劇団員に昇格。僕は全くダメダメで、よそでイチから勉強しなおすことにしました。
それ以来なんとなーく引け目みたいのがあったんですが・・・。僕、負けず嫌いなもんで。

今回の再会で久しぶりに一緒に、仲間として作品を作ったら、そういう思いが跡形も無く消えました。
所属する場所はちがうけど、お互いに頑張ろうって気持ちに自然になれました。
照れくさいから直接は言わなかったですけどね。

                                           (2005年12月 岩田翼)


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