タイトル |
哀愁橋
〔WATERLOO BRIDGE〕 |
ハーフムーン・シアター・カンパニー |
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作・演出 |
作:ロバート・E・シャーウッド 訳:荒井良雄 演出:吉岩正晴 |
上演場所
日程 |
2003年11月12日〜16日 /三百人劇場(東京)
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出演者 |
荒井ゆ美(マイラ・ドゥヴィル) 岩田翼(ロイ・クローニン)
阿部百合子(ホブリーさん) 佐藤昇(憲兵) 白井真木(キティ)
原孝之(老市民) 蔀英治(労働者) 高倉申充(特務曹長)
鈴木慶太(軍曹) 中島裕美(ガートルード/市民) 高山賢吾(警官)
中島由貴(労働者の娘/市民) 渥美孝明(将校/市民)
鈴木竜馬(オーストラリアの兵士/市民) 中井貴之(水兵/市民)
原口亮介(水兵/市民) 柞山友梨(労働者の娘/市民) |
あらすじ |
第一次世界大戦中のロンドン。テームズ川にかかるウォータールー橋の上。
ドイツ軍による空襲の合間の静かなひととき。
負傷して休暇中のアメリカ兵 ロイと、同じアメリカ出身の娼婦 マイラが出会う。
お互いに同じニューヨーク出身だと知って、はしゃぐ二人。
その時、再びドイツ軍の爆撃がはじまる…
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≪舞台エピソード≫
「ヴィヴィアン・リー&ロバート・テイラーが奏でたロマンの薫り高い愛の名画『哀愁』の舞台版」
この公演の宣伝チラシのキャッチコピーです。
そしてこの公演で僕が演じたのは・・・、そう、かの名画でロバート・テイラーが演じた軍人ロイ・クローニン。
初の主演。しかも往年のハリウッドスターが演じた大役。気合も入ろうというものです!
ほとんど出ずっぱりの上に、2人きりのシーンが多いこともあって、セリフの量も膨大でした!
私事になりますが、実は父も舞台俳優&声優をやっておりまして(「サザエさん」のいささか先生なんかやってます)
このころ2人とも舞台の本番をひかえていたのですが、父にはセリフの数をかぞえるという趣味がありました。
1ページにわたる長ゼリフでも「うん」の一言でもとにかく1つのセリフとして、自分の役のセリフを数えていくんです。
その研究(?)の結果、2時間の芝居全体では、会話の形にもよりますが
だいたい1200のセリフがあることがわかったらしい(!)です。
1人芝居でもないかぎり必ず相手がいるので、自分のセリフは最大600くらいということになりますね。
このとき父は2番目にセリフの多い役でしたが、その数は約150。
今回のロイ役はあまりにセリフが多いので、ためしにかぞえてみたら・・・450!
はじめて「覚えられるんだろうか・・・」という不安に襲われました。
もちろん本番までには何とか・・・。
セリフは多けりゃいいってもんではないですけどね、それにしても喋り甲斐のある役でした。
芝居のテーマ。「戦争」というのが本当によく出てきます。
2003年の出演作を振り返ってみたら、どれも戦争と関わりがあることに気づきました。
「マウストラップ」のクリストファは脱走兵、「マクベス」はスコットランドの王権争い、
「蔵のある家」の隆は伯父さんの疎開の話に耳をかたむけ、そして今回「哀愁橋」のロイは兵隊。
戦争は本当に残虐で、思わず目をそむけたくなりますが
それに苦しめられる人間を演じるには直視しないわけにはいきません。
今回、ロイのセリフにのなかに、とても言いにくいセリフがありました。
それは、戦地へ旅立つ時がせまったロイにマイラが「本当に残念だわ」と言うのに対する
ロイの・・・「なあに、これが戦争というものさ」という言葉でした。
稽古でこれを口にするたびに「自分は戦争について本当に知っているのだろうか?」
「この言葉を言う資格があるんだろうか?」という疑問に悩まされました。
実体験が無いので「調べる」以外に知る方法はありませんでしたが
いくら本を読んだりドキュメンタリーを観ても足りない気がして・・・。
なんとか言える範囲で言いましたが、公演が終わった今でも「足りなかった」という思いがあります。
体験していないことを演じる難しさが身にしみました。
これからも考えていきたいと思います。
2度と戦争で不幸になる人を出さないために。
そして今起こっている戦争が早く終わってくれますように。
(2004年2月 岩田翼)
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