〜インタビュー〜
アガサ・クリスティ原作のミステリー!今回も謎解きの醍醐味を味わえるステキなお芝居!
内容がミステリーだけに、ムリをお願いしてネタバレにならない程度にインタビューを敢行いたしました!!
すると…ネタバレ以前に、お話はとどまるところを知らず、かなりのロングインタビューになりました。
今回読み応えたっぷり♪です。それでは、いってみましょう!!
― マウス・トラップに引き続き、アガサ・クリスティ原作のお芝居ですね。 原作の小説はお読みになられましたか? 読みました。 ほんとうは台本ができあがってからディテールや背景を知るために原作の小説版を読みたかったのですが、まだ戯曲版の翻訳が完成していなかったので原作を先に。ストーリーを知りたいっ!ていう誘惑に勝てなかったんですよねー。 ― お読みになられて印象やご感想は? 本をめくると、まず表紙の裏側に登場人物の名前が書かれてあるんですが、驚いたのはその人数。なんと20人近いんです。しかも本編を読み始めると、登場人物紹介には書かれてなかった人物も次々に登場。「ホントに舞台化できるの?」と思ってしまいました。 ― 私も原作を途中まで読みましたが(苦笑)確かに登場人物は多かったですね〜。 まあ、あとで台本のほうを読んでみると、多少ストーリーが変更されていたり、登場人物もだいぶ減らされていて12人になっていました。本国イギリスでは1957年に初演されているんですが、戯曲化にはさぞ苦労したんだろうなあなんて思いましたよ。 ― そうですよね、今回の作品は本邦初公開!その辺りもいかがですか? 大変光栄です。 もし今回の翻訳台本が発売されたらオリジナルキャストとして名前が載るかも! でもこれまで日本で上演されなかったのもちょっと納得です。 原作がものすごくおもしろいし、「ゼロ時間へ」という主題自体がこの作品のキモなので、このおもしろさを舞台で伝えるのは本当に難しい。 あ、そうそう。ちょっとだけ『ゼロ時間へ』というタイトルについてお話させてください。 ― はい、聞かせてください。 「ゼロ時間へ」、原文で「Towards Zero」というのは、アガサ・クリスティー独自のミステリーの哲学とでもいうべきものなんです。 まず「ゼロ時間」というのは殺人の瞬間のことなんですが、大抵の場合、小説でも実際の事件でも、殺人が起きてはじめて事件が人の目や耳に入り、それがどう解決されていくかに関心が集まっていく。でもクリスティは殺人が発端なのではなく、ある人物が何かの理由で誰かに殺意を抱き、殺人を計画したり、あるいは衝動的に実行してしまうというプロセスに焦点を当てようとした。だから「ゼロ時間から(From Zero)」ではなく「ゼロ時間へ(Towards Zero)」なんですね。 ― なるほど。ある意味殺人事件のプロローグ部分に焦点を当てた。ということでしょうか? 今でこそミステリードラマや実際の殺人事件のニュースなどで犯人の計画性や不幸な生い立ちが注目されたりします。でもそれも殺人が起こったから注目されるのであって、もし犯人が犯行を思いとどまっていればその計画や恨みは誰にも知られないままです。逮捕されて取調べですべてを告白したとしても、それはあくまで言葉ですから僕らは想像することしかできません。 この作品ではそれを目の当たりにすることができます。 もちろんミステリーですから誰が犯人かは伏せられていますけどね。 ― 確かに思うだけ。なら罪にはならないし事件にもなりませんものね。 この作品はクリスティのミステリーですから、もちろん殺人事件が起きます。 ただそれまでがすごーく長いんです。 でも「ゼロ時間へ」という主題がはじめに語られていて、誰かが殺人を計画しているということはわかっているので、誰もが怪しく思えて飽きることがありません。読むほうはヒントを探そうと必死です。最後に犯人とその計画の全貌がわかると、まんまと騙されてしまっていても大正解でも、ほんとうにスッキリ! そして、それぞれの登場人物の恨みや悲しみ、そして愛情がじんわりとしみてきます。 今回の舞台をご覧になった方もそうでない方も、まだの方はぜひ読んでみてください! ― ところで二度目のクリスティ作品へのご出演となりますが、クリスティ作品のここが素晴らしい!こういうところが魅力的!など特徴的なことはありますか? なんといっても全ての登場人物が人として魅力的なところだと思います。 人間は推理ゲームやトリックのための駒ではなく、生きているんだ。ということを感じさせてくれます。 ひとりひとりが感じ・考え・話し・行動する。 だからクリスティの作品は、台本になっていない小説もふくめて全部が舞台や映画やテレビドラマにできるくらい完成されたものだと思います。 ― それは納得です。本当に登場人物全員が魅力的で人間味に溢れていますよね。では、そんな魅力的な登場人物の一人、今回演じるネヴィル・ストレンジの役作りは、いかがでしたか? では、まず、ネヴィルと僕を比較してみましょう! それだけで役作りの苦労はわかってもらえます!
― 止めてくださいよ〜、またまたご謙遜を… 本当ですって!(笑)とにかく違うことだらけで、なぜ配役されたのかさえいまだに不思議なくらいです。 自分が持ったことの無いものを想像するのはやっぱり難しい。 でも本当に魅力的な役だから、この役を演じることにチャレンジできて幸せでした。 ― では、そんなネヴィル・ストレンジに一言。 きっと、もっと人生を楽しめたはずだよ。 ― ん、なかなか意味深な発言ですねぇ。 今回、海外の演出家(グレッグ・デ−ル氏)の方とのお仕事は始めてのご経験だったかと思うのですが、実際、ご一緒にお仕事されていかがでしたか? グレッグさんはもう10年も日本に住んでらっしゃるので日本語はペラペラ。 ことわざとか四字熟語以外はほぼカンペキに理解してくれるので、コミュニケーションは全く問題ありませんでした。 たまにイントネーションはおもしろいことになってますけど(笑) ― (笑) あ、苦労したこともあります。 グレッグさんはご自身も俳優としても活動されているので、登場人物の動きなんかを実際にやってみせてくれるんですが、これがすごくうまいんです。ちょっとしたジェスチャーとか表情が生きてる。 でもそれを僕がそのままやってもうまくはいかないんですよね。だって普段肩をすくめたりしないですから。 ― 確かに。 それをどんなに努力してうまくやっても顔が日本人だから「外国育ちなのかな?」と思われるような別の個性が生まれてしまう。それは狙いじゃない。 だからグレッグさんがやってくれた感覚だけをもらって、自分なら、・・・というか自分がネヴィルだったらどう動くかを考えました。 ― それはある意味、新しい課題になりましたね。 翻訳劇をやることも多いんですが、今回グレッグさんという演出家と出会って、逆に日本人としての自分の個性ってものを初めて意識したかもしれません。そういう意味でも、おもしろいですね。 ― 今回ご一緒にお仕事されたことで、翻訳劇への取り組みに、また一つ新しいアプローチが出来そうな予感ですね。ありがとうございました。 …ミステリーのお芝居ですのでネタバレ厳禁。の中、答えられる範囲内で |