
開演の約2時間前に楽屋入り。
まずは廊下のイスに座ってコーヒーでも飲みながらぼーっとします |
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うわさのボイラー室楽屋。
後ろのダンボール箱がなんかリアル。。。 |
― 1ヶ月の長期公演、お疲れ様でした。
前回の舞台『ゼロ時間へ』から約半年ほど舞台のお仕事としてはブランクがあった訳ですが、役作りをする上ではやはり、たくさん時間があったほうがやりやすいものなんですか?
う〜ん、どうかなあ。
ちょっと色々思い出してみますね。
・・・今まで1番準備期間の短かったのが『王妃マルゴ』と『ガラスの動物園』
この2つは稽古も含めて2週間ちょっとしか無かった!
で、長いのは今回の『夏の夜の夢』とか『マウストラップ』とか・・・。
準備がたくさんできるメリットは役の背景がじっくり考えられることかなあ。
たとえば今回のデメトリアスだったら、ヘレナとの過去の出来事とかハーミアとの出会いとか・・
相手役の顔を見たときにそういうイメージがしっかり浮かぶ。
ただそういうイメージも、実際の演出プランによっては作り変えていかなきゃならないこともあるので、あまり作りこみすぎると融通がきかなくなる危険もあるんです。僕は稽古に入る前「デメトリアスはきっとヘレナに未練がある」と思っていたけど、もしそれが演出的に不必要なイメージだとしたら、それはさっさと捨てて「なぜ嫌いになったのか」というほうに頭を切り替えなくちゃなりません。
― (ヘレナへの未練)ポストショートークのときにもおっしゃっていましたよね。
今回は演出の三輪さんが僕の考えたイメージを受け容れてくださったので良かったです♪
― 本当ですね。
準備が長くても短くても、実際にお芝居が出来上がっていくのは稽古場で相手と向かい合ったとき。
時間がないときのほうが集中力が増して、一気に完成に向かっていくこともあります。
結論!
台本は稽古開始の1ヶ月くらい前に渡され、稽古は25日間がちょうどいい。
多分・・・。
― (笑)
でも僕らの仕事はその時々でちゃーんと対応してベストを尽くすしかないんですよねー。
今はそのためにいろいろなパターンを経験させてもらってる時期なんだと思っています。
― なるほど。では、今回のキャスティングを聞いて最初にどう思われましたか?
絶対にライサンダーだと思っていたので「デメかよっ!?」って(笑)
だってこの役むつかしいんです!
もちろん他の役も大変ですが・・・。
恋人4人のうち他の3人は魔法にかかったとき以外は純粋に1人を愛して、いわば「純愛」なんですが、デメは魔法にかかる前からあっちへ行ったりこっちへ行ったり。
挙句の果てに、魔法にかかるとはじめに追いかけていたのとは違う相手とくっつき、そのまんま最後まで。
「それでいいのか!?」とツッコミどころ満載な役なんです。
― 確かに(笑)
でもね、稽古に入る前に、劇団の先輩であり、かつてデメトリアスを演じられた田中さんとお話ししたときに
「デメだけはな、男のずるさとか屈折とか、いろいろ表現できて楽しいんだぞー」
といわれて目からうろこ。
― (うんうん)
その気になって取り組んで、今では一番好きな役になりました。
この変わり身の早さは、やはりデメトリアス向きだ!
― 役を好きになるって大切ですよね。
では、学生時代に演じたことのあるライサンダーと今回のデメトリアス。相反する役柄な訳ですが役に対するアプローチの仕方や考え方などその辺りはいかがですか?
前にライサンダーをやったのは生徒のときで、ほとんど何にも考えてなかったなあ。
デメトリアスとの性格の違いなんかも意識してなかったし。若さと勢いだけで(笑)
今回、陽介がやったライは、思い込みの強さとかまっすぐさが際立ってたような気がします。
なるほどな〜と思いました。
― そうですね、とっても情熱的なライサンダーでした。
デメトリアスに関しては特にこれといった強いイメージはありませんでした。
これまで観た『夏の夜の夢』では、デメは傲慢だったり、情けなかったり、イメージはいろいろ。
残念ながら自分の劇団の公演は、もうずいぶん前なので観たことがないんです。
単純にヘレナを嫌いになり、ハーミアが好きになったのかな、という程度の知識でした。
でも自分がやるにあたって何度か台本を読んだら、大きな疑問が2つ。
1つは、ヘレナと別れたとはいえ、なんでそんなに嫌うの?ということ。
嫌なら無視すればいいのに。
もう1つは、薬の力でヘレナはデメを手に入れるけど、デメはそれでいいのか?ということ。
いろんな愛の形があるから別にいいけど、なんかしっくりこないんです。
― そうですよね〜。
かつてシェイクスピアの時代は女性の役も男が演じていました。
観ているほうもそれをわかっていて、だからデメがヘレナを罵ったり蹴飛ばしたりしても笑っていられる。
笑って観ているぶんには、2組の恋人がどっちとどうくっついても、結果ハッピーエンドならそれで良かったのかも。
でも今回はヘレナもハーミアも女性。
せっかく本物の男女が演じるんだから、今回の恋人4人のシーンはちゃーんと現代でも納得のできるラブストーリーにしたいなと思ったんです。そう考えたとき、ふと浮かんだのは「デメはヘレナのことを嫌いじゃなくてもいいのかも」ということでした。
― なるほど。さすが周りの男性諸氏にアンケートを採っただけのことはある(笑)
捨てたヘレナに未練もあるし罪悪感もあるデメトリアス。
ハーミアを追ってはいるけどそこには出世とか打算がある。
けど心の底では一緒にいたい相手は、かつて本当に愛したヘレナ。
妖精はデメの心がわかっていて導いてくれる、みたいなね。
― よくはわかりませんが、そういうアプローチって珍しいのかもしれませんね。
とまあ、そんなことを考えながら作ったものの、セリフのどこにもそんなこと書いてないから難しい難しい!
わかってくれる人が少ーしいてくれればいいんです。
嫌われても追いかけるヘレナの可愛さのほうが見どころですからね。
― 言葉の端々にヘレナへのそこはかとない愛情が感じ取れ、ステキでした。
では、そんな愛すべきヘレナをはじめ、恋人チームのご共演者の方々について一言。
陽介(ライサンダー)とは演劇学校のとき6本中3本で絡みあり。
外部も2本。劇団の公演でも6本中3本でからみ、1本は同じ役のダブル。
昴での遭遇率6割!毎度どーも!
米倉さん(ハーミア)は『フィリップの理由』と『ジュリエットたち』で共演。
湯屋さんは初めまして!
みんな最高でした。
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歌うライサンダー。 |
歌うデメトリアス。 |
なぜか踊り歌うハーミア。
かわいいでしょ? |
開演の1時間半前。ダンス&歌の稽古が始まります。恋人4人は舞台上での歌はありませんが
Last Songだけは袖の中で歌います。 |
― 劇団昴、といえばシェイクスピア、と言われる劇団な訳ですが今回の「夏の夜の夢」という戯曲について感じていらっしゃることや、シェイクスピア作品について何か思いなどあれば…
これまでたくさんのシェイクスピア作品を見守ってきた三百人劇場。
そこで演じた『マクベス』のマルコムと『夏の夜の夢』のデメトリアス。
本当に光栄に思います!
(『夏の夜の夢』に関して)笑えるという意味なら、シェイクスピアに限らずもっと笑える喜劇はいくらでもあると思うんです。
格好良さとか、人の心に(特に日本人の心に)ダイレクトに伝わるという意味では、演出の三輪さんもおっしゃったように、シェイクスピアでも悲劇のほうがすごい。だから「なぜ今『夏の夜の夢』?」って思っていました。
そして稽古から本番まで2ヶ月以上この作品のことばかり考えてきて・・・
僕は演じた側の人間だから、思い入れがあるし客観的には観られないけど、tocoさんが千秋楽のあとに書き込んでくれた
「喜劇。笑えることが喜劇だと信じていました。今までは。だけど、喜劇の意味が文字通り、喜びの劇だとしたら、まさにこの作品、昴の『夏の夜の夢』は幸せな気持ちに浸れる喜劇だと私は思いました。温かくて幸せな夢を見ているような気持ちに浸れるそんなお芝居。」
っていうのが答えなのかなーと思います。
そしてそういう意味で最高の戯曲なんじゃないかな。
― え、私のコメントですか…。そんな、恐れ多いです、ハイ(汗)
では戯曲としてではなく、夏の夜の夢という言葉で連想することって何かありますか?
家の近所に「ガラスの仮面」で北島マヤが『真夏の夜の夢』を演じた公園の野外ホールがあるんです!
マヤのパック、あそこで実際に観てみたいなー。・・・漫画だけど。
でもあそこに2000人の観客は絶対無理だって!
池に落ちる(笑)
― 私の中でも実は「夏の夜の夢」の刷り込みはこの漫画だったりします(笑)
約1ヵ月の長期公演だった訳ですが、恋人チーム以外の共演者の方々、公演期間中のエピソードなどありましたらお聞かせください。
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三百人劇場の楽屋名物。手作り日程表
今回は僕がワクと文字を書きました |
中日パーティーで、バーベキュー |
最後のシーンで舞う紙ふぶき |
恋人4人、職人、妖精。
シーンが別々なので稽古も別々ということが多く、同じ芝居に出てる気がしないねー
なんて声もしょっちゅう聞かれました。
初日の開演5分前。最初の出番は僕ら恋人たち。舞台袖に向かうとき
職人さんたちや妖精さんたちから、「頼むぞ!」「行ってらっしゃい!」の声。
ただの挨拶じゃない、本当に心のこもった声。
その瞬間、このカンパニーはひとつになりました。
23ステージもあると、体は条件反射するようになります。
開演直前には放っておいてもテンションが上がるし、疲れて出てくるシーンの直前には
本当に体が重くなる。
ひとつ困ったのは、最後のほうの静かな1番いいシーンでお腹が鳴るようになってしまったこと。
これ、体が覚えて習慣になってしまったらしく、あらかじめ満腹にしておいても直らないんです。
幕間の休憩中にも食べたのに、それでもダメ。
体重は増えたけど。
千秋楽まで鳴ってました。
― それは大変でしたね(苦笑)
でもあーいうのって人にもうつるのかなあ。
公演も終盤に入って、そのシーンになると一緒にお腹を鳴らす仲間ができました。
ね、ヘレナ?
― ヘ、ヘレナ?!それじゃ、腹ペコカップルですね(爆)
楽しいお話をたくさん、ありがとうございました!
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ヘレナとデメトリアスはアセンズで仲良く暮らしましたとさ。
(終演後。汗でテカテカですが・・・) |
千秋楽終了後
ヘレナとデメは湯屋さんと翼に戻って、記念撮影。
さよなら三百人劇場。さあ打ち上げだ! |
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